[其の一] あまえっこ(甘酒)

「甘えん坊」に似た音だからか、聞いただけでホンワカ暖まる言葉。秋田県横手市の小正月行事「かまくら」では、子供たちが「あまえっこ飲んでたんせ!」と道行く人に声をかけ、甘酒を振る舞う。

最近、この甘酒が注目されている。塩糀ブームに続き、今度は「甘糀」の呼び名で、料理にスイーツに引っ張りだこだ。炊いたご飯に同量の糀を入れ、ぬるま湯を入れて炊飯ジャーの保温で8時間。家庭でも作れる手軽さがまた良いのだろう。実は、秋田では昔から甘酒を飲み物としてだけではなく、調味料として使っていた。

私の母は、昭和22年に我が家に嫁いで来た。母が几帳面だったか、その姑が厳しかったのかは別として、一年間の家の行事とそのハレの日に出す料理を「覚書帳」に残している。その中に甘酒を使った「タコの刺身」のレシピを発見した。

conv0002〈タコ五切れにワサビ味噌〉
ワサビ味噌は味酒(甘酒)半分、みそ半分
ワサビ少々 細かく切った茎もこれと混ぜ合わせて
紙を伏せて蓋をして一日ぐらい置いて(刺身にかけて)食べる

味噌を甘酒で伸ばし、ワサビを刻んでドレッシング。砂糖がまだ一般的でなかった頃、甘酒を「甘味と旨味の調味料」として、ここ一番の料理に使っていたのだ。「発酵文化大国」を自負する秋田としても、この事実はちょっと鼻高々。今の甘糀ブームに対し、「時代が秋田に追いついてきた」と記者会見でも行いたいものだ。

「おいしく食べたい。おいしく食べさせたい」──「あまえっこ」は、そんな気持ちが生んだ、優しい調味料でもあるのだろう。